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徒然です


by oneho-inway0621
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其十二

約束の日が来た。

キョウはいつもより早く目が覚めてからずっと気分が落ち着かないでいた。
約束の場所に行こうと決心したものの、本当に彼が来るのか、自分が彼のような人と会ってもいいのだろうか、このような疑問が頭の中を巡って答えが出てこない。
しかし、約束を申し出た彼の顔を思い出す。

“キョウさん。僕、ずっと待っていますから。”

満面の笑みでこう言った彼。

もし来なかったとしても、それはそれで踏ん切りがつくかしら。
・・よし、もうここは当たって砕けろ、ね。こんなにくよくよしてるのも私らしくないわ!
持ち前の芯の強さで気を取り直したキョウは、当たって砕けろとは自棄になって言いながらも、いつも以上に念入りに支度をし始めた。


「若様、どうかされましたか?」

「・・え?」

自宅の庭を日の出前からうろうろする李家当主のご子息の様子を心配そうに伺う使用人たち。
そんなガクの姿を見るのは初めてだった。

ガクはといえば、そんな奇怪な行動に出ている自覚がない。
ただ眠れず、何をしていいのか分からないだけだ。
さらにそのガクを変に見せているのは、ガクが思いっきり外出するための服に着替えていることだ。
今日は学堂はないはず。普段なら、家に一日中引きこもって本を読みふけってるものを、今日はどうしたのだろうか。

「若様、今日はお召し物からすると外出なさるご予定ですか?」

「あぁ・・まぁ、一応な」

「では、誰かが一緒に・・・」

「そ、それは結構だ。・・その・・うん、少し、商店街を見に行くだけだからな。」

「何かお買いになるのなら、やはり誰かが・・」

「いや、大丈夫だ・・何か買うというより・用事があって・・とにかく大丈夫だ」

「そ、そうですか・・」

いつもの口が立つガクらしくないうろたえぶりに怪しさは増す。

「いつ頃お出かけに?早朝からずっとそうしておられますが・・」

「あぁ・・そうだな・・そろそろ出ないとだな」

「え?あ、そうですか。あ、いってらっしゃいませ!!お気をつけて!!」

ガクは我に返ったように早足で家を出て行った。
使用人たちはガクの突飛な行動に唖然としている。

「若様、どうなさったのだろうか?」

「明らかに様子が変でしたよね・・」

「もしかして・・ついに若様にも恋が訪れたとか!?」

「「恋が!!??」」

生まれてこの方、勉学にしか興味のなかった若様の初めての色恋沙汰疑惑に李家の使用人たち一同が湧いたのだった。


二人が会うことを約束した、都から少し外れた丘。
時刻は日が昇ってから数時間経った頃。
丘の上に生えている青々とした一本の木の根元に、一人の青年が立っている。
すらりとした長身に、凛々しい顔立ち。
近くには寄らないものの、都の娘たちはその姿を少し遠くから眺めて、ため息をこぼす。

「あの方、李家の若様らしいわ。家柄もさることながら、容姿もあんなに優れているなんて、一度でいいからあの方の目にかかりたいものだわ」

「まだ縁談が決まってないらしいわ。私にも機会があればよいのだけれど・・」

「余程のお家のご令嬢じゃないと、彼とのご縁なんて無理よね」

そんな娘たちの声が聞こえているのかいないのか、ガクはそちらの方を見ることもなく、青々とした木と空を見上げるだけだ。

そこにキョウが近づいて来た。
丘に近づくにつれ、なぜか娘たちが多くなっていく気がする。
都から少し外れたところだからそんなに人はいないと思っていたのに。
そんな中、丘の方から歩いてくる娘たちが少し興奮気味に話す内容が入ってくる。
素敵な若様?お家柄も揃っていらっしゃる??・・まさか、もういらっしゃってるの!?
少し早めに着くように家を出たつもりだったのに・・歩くのが遅かったかしら。
待たせてしまうなんて・・

丘が見えるようになると、いよいよ人々、特に都の娘たちがその丘のふもとに群がっている。
その者たちの視線の先には、さっきから聞いていた内容から一切劣ることのない、雰囲気を携えて佇む彼がいた。

どうしよう・・こんなに人の目がある中で、彼に近づくことなんて出来ない・・
長衣を被って、ふもとの人々の中に紛れて動けないでいると、不意に名前を呼ばれた。

「キョウさん!!」

声のした方を、長衣の隙間から覗くと、皆の注目の的である彼が、確かに私を見て手を挙げている。
それと同時に周囲の視線が一斉に自分に注がれるのが分かる。
だからといって、このまま逃げるわけにもいかないので、長衣を深く被ったまま、少しずつガクの方へと進みだした。
一瞬静まり返った周囲が、キョウが一歩進むたびにざわめいていく。
しかし、ガクにそんなざわめきは届いていない。
キョウが来てくれた、この嬉しさで胸がいっぱいになっている。

ようやくガクの目の前にキョウがたどり着いた。

「イ・ガク様、お待たせしてごめんなさい。もう少し早く家を出ればよかったのに・・」

開口一番で謝るキョウを遮って、ガクは告げる。

「ありがとう。来てくれて、本当に嬉しい。僕が早く来すぎただけだ、そんなこと気にしないで。・・それに」

ガクはキョウが被った長衣を少し開けて、自分だけにキョウの顔が見えるようにする。
キョウは急に開けた視界にまぶしさを感じて目を細めながらも、徐々にはっきりとする視界の先には、とてつもなく温かい微笑みをしたガクがいた。
そんな表情をしたガクと目が合ったことで一気に頬が熱くなるキョウ。
ガクは、そんなキョウを見て、困ったような顔をしながら言葉を続けた。

「それに、こんな素敵なキョウさんを一人で待たせるのは、もっと心配だ」

率直なガクの言葉により火照るキョウ。

二人の周りにはまだたくさんの人々がいて、相変わらず注目の的だったが、二人はもう周りなど見えていなかった。
ガクにはもとからキョウだけしか見えていなかったうえに、キョウには長衣に囲まれた視界の中で、目の前の微笑むガクと木の葉が風に揺られて奏でる音、それだけだった。

青空と青々とした木々を背景に容姿端麗な二人が佇む風景は、誰が見てもお似合いで幸せな光景であった。
そして、その光景を見つめる人々の中に、洪氏から依頼を受けた者もいたのである。

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お久し振りの前世のお話です!!!
前世の二人は今のところ幸せな時間を過ごしてますね・・(#^^#)
書いていてもほっこりした気持ちになります。。
前世はこれからがだんだん不穏な雰囲気になっていくのかと・・(*_*)

皆さん、いつも不定期な更新で、本当に申し訳ありません。

2015年は私にとってはあっという間の一年でした。
2016年は今年よりもっと多くのお話を皆さんにお届けできるよう頑張ります!!
皆さん、「蓮の花」をこれからもよろしくお願いしますm(__)m!!

Onehoでした!!









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by oneho-inway0621 | 2015-12-30 14:12 | 桔梗の輪廻~序章~